First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S5 雨の降る日々

しとしとしと。

そんな音が聞こえてきそうな雨の日。

2週間前に気象庁は入梅を発表した。

空はどんよりと雲に覆われ、涙の雫のような雨粒が空から落ちてきた。


昨日、下駄箱に春雪からの手紙が入っていた。

これでもう15通目になる。

その記念すべき15通目はドライブへの招待状だった。

学校のそばに車を止めておいて、授業が終わったらイルミネーションがきれいな、町のはずれの美術館に行くことになった。

幸い、今日は朝から晴れ間が広がり、星も見えるでしょう、と気象予報士が言っていた。

私は朝からメイクを入念にして、制服の他に至福を持っていくことにした。

どんな服がいいかな。

ショートパンツをはいて春雪をドキドキさせるのもいいかもしれない。

でもワンピースで大人っぽく決めたほうが春雪も喜ぶかもしれない。

私は悩んで悩んで、迷いに迷って、コットンのチュニックに花柄のレギンス、エスニック調のかかとの低いサンダルを選んだ。

鞄に詰めると、結構荷物がかさばる。

でもそんなことも気にならないほど、私は幸せな気持ちでいっぱいだった。


授業中はそわそわしたり、余所見をしてはよく怒られた。
< 115 / 162 >

この作品をシェア

pagetop