First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
時間は夜の7時。

閉館時間を見ると、7時半だった。

どうやらぎりぎりのようだった。

私たちはしばらく絵を眺めたあと、美術館の学芸員さんにイルミネーションを見に来たことを告げた。

学芸員さんは笑顔で美術館の裏手に案内してくれた。

そこには小さな噴水があって、パルテノン神殿のような建物がそびえていた。

噴水には色とりどりの花の花びらが浮かんでいて、水槽の下から青い光で照らし出されていた。

神殿のほうも真ん中に大きなマリア像が建っていて、それに向かって2色の光が当てられていた。
とても神秘的な光景だった。

「きれい…」

思わずつぶやく。

「な、綺麗だよな」

春雪もうなずく。

つないだ手に力が入る。
今、私はここで不思議な世界を見ている。

そしてそれを世界で一番愛する人と一緒に見ている。

こんなに幸せで、いいのかな。

急に不安になった。

私が春雪の腕をぎゅっとつかんだせいか、春雪は驚いたように私を見てからそっと抱き寄せてくれた。

「大丈夫だよ、いろは。今までいろはは頑張ってきた。これから幸せになればいいんだよ。だから心配しないで」
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