First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
「だって、コータ君、彼氏って何?って…私にも彼氏って何かはわからないよ」

「あ、そうじゃなくって、いろはの彼氏って何してる奴?」

しどろもどろになりながら慌てて言い直すコータが何だか可愛くて。

少し、心が解けた気がした。

「言ってもいいのかな」
「言えないような仕事してんの?」

「うーん、そういうわけじゃないけど…」

「じゃあ教えてよ」

私はしばらく考えた後、
「ごめん、まだコータ君のことよく知らないから、彼氏のことは言えない」

コータは小石を蹴り上げ、制服のズボンのポケットに手を突っ込むと、

「じゃあさ」

「うん」

「これから色んな俺を知ってよ」

「えっ?」

「俺、店に入っていろはと目が合っただろ?そのとき、いろは会釈してくれたじゃん。しかもすげーさりげなく。今までそういうことする女って正直会ったことないんだ。言い寄ってくる女はみんな目の奥に計算式が見えちまう、っつーのかな。『あ、こいつは俺の中身を見てないな』ってわかるんだよ」

意外だった。

見た目は遊んでそうなのに、そんな繊細なところがあったなんて。

私はコータに好感を覚えた。

「…うん、まぁ、考えておくね」
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