First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S1 コータの夢

空に飛行機雲が線を描く。

見事な直線だった。

線は時間とともに次第に揺らめき、ぼやけ、消えていった。

私は一人で、その様子を眺めていた。


ここは以前、春雪に紹介してもらった、春雪のいとこの真咲さんの家。

春雪に紹介してもらったときからメールをずっと交換していた。

夏休みに入るというメールを送ったら、「遊びにおいで」と言ってくれたのだった。

春雪も来るといったのだけれど、あきは姉ちゃんの手前、それは無理だった。

だから私は電車を乗り継ぎ、タクシーでここまできた。

2泊3日の予定でお世話になる。

真咲さんの家の前に着くと、愛犬のミート君(お肉が大好きなのでそう名付けたらしい)が私の足元にまとわりついて、撫でてほしそうに私を見上げる。

私はあまりにも可愛いので、思わずぎゅっと抱きしめた。

出迎えてくれた真咲さんは相変わらず静かな人だったけれど、手話の勉強を少しずつしてきた私は、少し言っていることが理解できるようになった。

「ま、さ、き、さ、ん、お、せ、わ、に、な、り、ま、す」

「よ、く、き、た、ね。ま、って、た、わ」

真咲さんの笑顔があまりに綺麗で優しくて。
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