First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
それだけで涙が出そうだった。

真咲さんは私をぎゅっと抱きしめると、私の荷物を持って、真咲さんの部屋に運んでくれた。

「しゅ、ん、せ、つ、は、げ、ん、き」

「はい、元気です」

私は持参してきたホワイトボードにそう書きなぐった。

真咲さんは嬉しそうに微笑むと、私のために用意しておいてくれたアイスティーを勧めてくれた。
しかも手作りのマフィンもお皿に乗っていた。

「いただきまーす」

私がマフィンに手を伸ばすと、真咲さんもマフィンに手を伸ばした。

それから色々な話をして、私たちは盛り上がった。

昔の恋の話や、子供の頃の話。

真咲さんがラムネのビー玉がどうしても欲しくて、瓶を割ったら、ビー玉まで粉々になってしまったという話には思わず笑ってしまった。

それからヘルパーさんが夕食の準備をし終えるまで、建物の周りを散歩することになった。


私は首からホワイトボードをぶら下げ、真咲さんの隣を歩く。

真咲さんのオフホワイトの靴のつま先を見つめながら、

「私、家族を捨ててでも春雪のそばにいようと思うんです」

「か、ぞ、く、を、す、て、る?」
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