First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
運よく前から5列目のシートに2つあいた席を見つけた。

私は真咲さんの手を引き、その席に座った。

「すごい熱気」

「そ、う、ね」

「毎年やってるのかなぁ」

「え、え、わ、た、し、は、ま、い、と、し、き、て、る、わ、よ」

「そうなんだぁ。こんな野外フェスがあるなんて全然知らなかった」

「こ、の、お、ん、が、く、さ、い、か、ら、で、びゅー、し、た、ば、ん、ど、も、た、く、さ、ん、あ、る、の、よ」
「へぇー、音楽界への登竜門なんですね」

真咲さんは頭をこっくりと縦に振った。


私たちがステージを見つめていると、ステージにスポットライトが当てられた。

一瞬辺りが静かになる。
そして次の瞬間、大きな花火が鳴った。

静かだった観客席のあちこちから、絶叫する声が聞こえてきた。

それから一組目のバンドが登場して、ギターを激しく鳴らした。

観客は一気にヒートアップ。

私もその中の一人だった。

生のバンドを見るのはこれが生まれて初めてで。
あまりの存在感に圧倒されっぱなしだった。


何組目のバンドだったかは数えていなかったのでわからないけれど、甘いバラード調のイントロが流れてきた。
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