First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
出演者の控え室は、野外ステージの裏に仮設テントのような形で作られていた。

私は真咲さんの手を引いて、恐る恐る中を覗いた。

すると、警備員の男の人に声をかけられた。

「すみません、ここから先は関係者以外立ち入り禁止なんですが」

「あ、あの。知り合いに会いに来たんです」

すると警備員は胡散臭そうな顔をして、

「どのバンドの誰ですか」

「えっと、Uta-Himeのコータです」

「ちょっと待っていてください」

警備員は無線機で誰かと話してから、私たちに向かって首を振った。

会えないのか、そう諦めかけたとき、私たちの背後から声がした。

「あれっ、もしかして、いろは??」

聞き覚えのある声に振り向く。

「コータ」

警備員は私とコータを交互に見てから、

「こちらがお知り合いの方ですか」

と私に尋ねた。

頭をこくっと振る。

「すげー嬉しい。見に来てくれたんだ」

「うん、偶然私もこの近所に泊まりがけで遊びに来てたんだ」

「中に入ってきなよ。他のメンバーも紹介するからさ」

「いいの??」

「ああ、いいですよね、警備員さん」

警備員はしぶしぶ私と、真咲さんをテントの中に入れてくれた。
< 134 / 162 >

この作品をシェア

pagetop