First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S1 春の雪

お兄さんに手を引かれて私はマックに入った。

私に席に座っているように言うと、お兄さんはカウンターへ注文しに行った。

よく見ていると、店員さんと親しそうだ。

楽しそうに笑う顔はとてもかっこよかった。

笑顔が素敵なんだね。

誰もが振り向いてしまう笑顔。

そんな笑顔、私、誰にも見せたことないな…。


お兄さんがトレーを持って戻ってきた。

トレーにはシェイクとコーヒーが載っていた。

「これ、俺のおごりだから。あ、もし何か心配してるならそんな必要ないから。何もしたりしないよ」

お兄さんは優しく笑った。

なんだか胸がどきっとして、息苦しくなりそうだった。

「俺は井上しゅんせつ。春の雪、って書くんだ」
「へぇー、変わった名前なんだね、お兄ちゃん」
「春雪でいいよ」

「うん、ありがとう」

私はシェイクを口に含む。

甘さが広がって思わず、
「ひあわへー」

と言ってしまった。

春雪は笑いながら私を見ていた。

「さ、君の話を聞かせてもらおうか。まず名前は?」

「黒川いろは、小学6年」

私はそのとき、春雪の目が悲しそうになったことに気づかなかった。

「で、なんでこんなところにいるの」
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