First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
私は携帯を握りしめながら、不安を振り払うように空を見上げた。


真っ白な月が浮かんでいた。


握りしめた携帯の通話口からコータの「いろは、どこだ?!」と呼ぶ声だけが聞こえてきた。


私はごめんね‥コータ‥とつぶやくと終話ボタンを押した。




私は帰る場所を失ってただ呆然と立ち尽くしていた。




これからは一人で生きて行かなくちゃ‥


もう頼れる人はこの世界には存在しない。


私は携帯の電源をオフにしてそっと植え込みの中に隠した。




これで、私は、解放された。


愛と夢と引き換えにした自由はなんだか虚しさだけを残して、風に乗って流れていった。
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