First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
私が一人で暮らし始めるに当たって一番困ったのは、諸々の契約書に親のサインが必要なことだった。


そんなとき私は年齢を偽って契約するしかなかった。


罪の意識はもちろんあったけれど生きていくには仕方なかったし、できるだけ人を巻き込みたくはなかった。


私は一人で生きていく。


そう、決めたのだから。

幸い、年齢より上に見られるようで契約はスムーズに行くことが多かった。



意外と世の中ってアバウトなのかも‥なんて思ったりもしたけれどヒヤリとすることもままあった。


私の仕事は多岐に渡った。早朝の新聞配達に始まり、次は病院の清掃を半日、夕方から夜中の2時までは飲み屋でバイト。

男性客にセクハラされるのは日常茶飯事だった。

もちろん嫌で嫌で仕方なかったけど、暮らしていくためには我慢するしかなかった。



こんなに毎日働いていたって不景気の今は収入もたかが知れている。


月曜日から土曜日まで働き詰めで唯一休める日曜日でさえ新聞配達の仕事だけは休みにならなかった。



そんな私の生活は苦しいけれど、たったひとつの楽しみがあった。



それはアパートの近くの公園で晴れた休みの日に森林浴すること。
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