First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
アパートの近くにある森林公園にはたくさんの木々が群れをなすように生育していて、その下を歩きながら木漏れ日を浴びることが、弱りかけた私の心を生き返らせてくれるのだった。



家族と暮らしている間は物に恵まれ、生活は退屈で仕方ない代わりに保証はされていた。



でも今は生活の保証すらなく、暮らしていくのがやっとだった。



辛いように見える私の生活だけれど、実際は日々生きていることを実感させられた。


私は自分の足で立っている。


支えになるものはなくしてしまったけれど確かに私は生きているのだ。


こんな思いを贅沢に暮らしているときには感じられなかったのに、苦しいはずの今、私は感じていた。



もう過去のことは忘れよう。


家族のことや幸せではなかったけれど自分が恵まれて暮らしていた日々も‥。



思い出にすがっても生きてはいけない。


むしろキレイな思い出は私の足を引っ張るだけのお荷物でしかないのだ。


見知らぬ土地に来て、最初は不安だらけだったけれど、私は今、生きている自分をこの体で感じていた。


生きてるよ、私。


やっと生きている自分を感じているよ。


それがただ嬉しかった。
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