First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
春雪はにこっと微笑んで、

「バイト先の同僚にからかわれちゃったよ。『小さな彼女は今日もこないの』って」

かの、じょ…。

顔が一瞬で真っ赤になる。

やだ、彼女なんて。

恥ずかしいよぅ…。

真っ赤になった私の顔を覗き込んで、春雪は、

「何かエッチなこと考えてない?」

と笑った。

ますます顔が熱くなる。
「ばーか、そんなんじゃないよっ」

素直になれない。

はぁ、可愛くないなぁ、私。

春雪は鞄を地面に置くと、何かを鞄の中から取り出した。

ピンク色の桜紙に包まれた、小さな小箱。

薄紫色のリボンがかかっている。

「はい、これ。約束のピアス」

うわぁー!!!!

私は小箱を受け取ると、頬に近づけた。

頬ずりすると胸に抱えた。

「どうした?中身ならちゃんと入ってるぞ?」

もうっ、的外れなんだから。

せっかくの感動が薄れちゃうじゃない。

鈍感だな、春雪は。

「違うよ、嬉しさを温めてるだけだよ」

「なんだ、そうか。まぁ、あんまり高いもんじゃないけどな」

と鼻の頭をぽりぽりかいた。


私はゆっくりとリボンをはずした。

桜紙もゆっくりはがす。
白い箱のふたを開ける前に、目を瞑った。
< 23 / 162 >

この作品をシェア

pagetop