First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
お父さんは優しいけど、お母さんには頭があがらない。


私が中学受験でお姉ちゃんたちの学校に入れるかどうかはわからないけど、お母さんはその気だ。
「幼稚園でも小学校でも失敗したんだから、中学は必ずいいところに行きなさい」

わかってる、わかってるよお母さん。

でも私はお姉ちゃんたちと違って頭が悪いんだ。
でもそんな私でもお母さん、あなたは見捨てずにいてくれますか?


塾に行く途中、私は赤信号で止まった。

自転車からおりて、青に変わるのを待つ。

ふっと横に目をやると、どこかで見たことのある顔。

んー?誰だっけ。

思い出せないけれど、喉の辺りまで名前が出掛かっている。

あ、か、さ、た、な。

は、ま、や、ら、わ!

そうだ、渡部さんだ!

確か同じクラスの。

私はまだ引っ越してきたばかりでクラスメイトの顔と名前が一致しない。
渡部さんは姿勢が正しくて、横顔が綺麗だった。
鼻高いな、目大きいな。
高く結い上げたポニーテールには金ラメのシュシュ。

渡部さんはちらっとこちらを見ると、

「あっ」

と声を上げた。

えっ、私何か悪いことしたかな。

少しどぎまぎ。

「あなた確かいろはちゃんだよね?」
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