First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S4 Rainy Day

廊下を走って下駄箱に直行した。

下駄箱につくと、私はうずくまった。

なぁんだ、春雪。

婚約者がいるんじゃない。

私一人、過去を引きずって、切なくなって、なんだかバカみたい。

ずっと、会いたいと思っていたのに。

春雪の愛する人はどんな人?

私みたいな出来の悪い人じゃないよね。

きっとすばらしい人なんだ。

そう思うことで私は自分を慰めた。

靴脱ぎ場から外を見ていると、しとしとと雨が降っている。

春の雨が煙っている。

雨、か…。

私はすっと立ち上がり、鞄をあさった。

確か、傘を持ってきていたはず。

折りたたみの傘を捜すけれど、鞄から出てくるのは、化粧ポーチや、携帯電話、お財布ばっかりで、傘が見つからない。

どうしよう、今日は母親が話があるから早く帰ってきなさい、って珍しく話しかけてきたのに。

別に話しかけられても嬉しくもなかったし、家族全員に召集をかけていること自体面倒くさいな、と思った。

私が傘がなくて、ごそごそしていると、背後から、

「どうしたの」

と誰かに声をかけられた。

懐かしい、声。

私がかつて愛した人。

今でも本当は大好きな人。
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