First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S5 どうして…?

ゆっくり私たちは歩いた。

会話はない。

私は必要以上に緊張して、口が乾き、喉もざらざらしている。

学校の前のバス停に着くと、私は、

「私、行きは電車なんですけど、帰りはバスなので。ありがとうございました」

「いや、いいよ。それに俺もこのバスだから」

内心気まずいよなぁ、と思ったけれど、どうしようもなかった。

嬉しいような気持ちも、しないでもなかったし。
私はバスの前の席。

春雪は一番後ろの席に座った。

背中に春雪の視線を浴びているような気がして、とても緊張した。

勘違いに過ぎないとは思うけれど。


バスは静かに走った。

雨の雫が窓に当たっては流れた。

大通りから外れた、小さな道を入っていく。

学校から6つ目のバス停の前で私はいつも降りる。

バス停と家は目と鼻の先だ。


バス停についた。

私が、降りるボタンを押そうとしたら、誰かに先を越された。

こんなところで降りる人が他にもいるなんて。

普段はめったに降りないのに。

私は疑問に思った。

でもかまわず、なるべく春雪のほうに目を向けず、バスを降りた。

まだ雨が降っている。

すると、後ろから誰かが傘をさしかけた。
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