First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
まさか、ね。

私は恐る恐る、振り返る。

そこにはやっぱり春雪が立っていた。


「黒川、いろはさん、だったよね」

春雪は言った。

私は何も言えずに目だけを大きく見開いた。

「俺、黒川あきはさんの婚約者の、井上ハルユキです」


どうして、こんなことに…。


「先生、私のこと、覚えてないの…?」

先生は首をかしげ、不思議そうに私の言葉を受け入れた。

「覚えてる、って何を?」

春雪の目は嘘をついているとは思えなかった。

本当に、私を忘れちゃったの?

そして、どうしてあきは姉ちゃんと春雪が、婚約してるの?

私と春雪は見つめあったまま、バス停に立ち尽くしていた。

雨の音がやたら響いて、耳に痛かった。



春雪。

運命って残酷だね。

私、神様なんて、この世にいないんだ、って強く思ったよ…。
< 45 / 162 >

この作品をシェア

pagetop