First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
だからこの日、初めて春雪の運転する車に乗った。

バックするときに後ろを振り返るときのしぐさ。
ルームミラーを直すときの手の動き。

全てが大切で、欲しくて、私のものにしたくて。
でも助手席にはあきは姉ちゃんが座っている。

しかも時々、甘えたように春雪の腕に触れる。

やめて、私の春雪に触らないで。

内心叫びだしたい気持ちでいっぱいだったけれど、ぐっとこらえた。


ショッピングセンターに着くと、駐車場に車を止めた。

車から降りると、あきは姉ちゃんはじゃれつくように春雪の腕に自分の腕を絡めた。

春雪は表情一つ変えない。

笑っているようにも、怒っているようにも見えた。

でもあきは姉ちゃんは嬉しそうで、私のほうをちらっと見ては、鼻をスンと鳴らした。

負けてたまるか。

絶対にあきは姉ちゃんなんかに負けないんだから。

私は怒りとともに沸き上がってくる、しょっぱい涙を懸命にこらえた。

春雪の背中が遠い。

そばに寄りたい。

でも私たちは義兄弟としてやっていく、そう決めたんだ。


そんなことを考えながら駐車場を歩いていると、ブッブッブーッと大きなクラクションを鳴らされた。
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