First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
慌ててよけようとしたそのとき、春雪が自分のほうに抱き寄せてくれた。
ふわっ。

そんな包まれるような感じだった。

「いろはちゃん、大丈夫か」

春雪はお姉ちゃんに見せていた笑顔とは違って、心底心配してくれたような表情で私に尋ねた。

「あ、はい」

思わず私のほうがたじろぐ。

抱かれた肩が緊張でがくがくしている。

今、春雪の腕の中にいるんだ。

そして、春雪は体を離すと、

「ちゃんと左右確認しないとだめだよ」

と私の頭をぽんぽんと2回叩いた。

それを見ていたあきは姉ちゃんは面白くなさそうに、

「いろは、いくらハルユキが優しいからって、ハルユキはあなたのクラスの先生なのよ?あんまりなれなれしくしないほうがいいんじゃないの」

春雪は、また感情のない笑みを浮かべ、

「あきは、俺たちは義兄弟になるんだから、少しは仲良くしておかないと」

「美しい兄弟愛ね」

あきは姉ちゃんはぷいっ、と顔をそむけると、さっさと歩いて行ってしまった。

私と春雪顔を見合わせて、笑った。


自分たちがあきは姉ちゃんを欺いているとは思わなかった。

だって私が愛しているのは、春雪だし、春雪の気持ちも私は知っている。
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