First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
後ろから声がした。

私は振り返る。

綺麗な身なりの、奥さまっぽい感じの女性が立っていた。

「あの、私、なんでここに…」

「覚えてないのね」

「はい」

「ある人が草むらで倒れているあなたを連れてきたの。軽い日射病みたいね」

「そうですか」

足元で何かが動いた。

わんわん。

人懐っこい鳴き声がする。

コーギー犬が長い胴をさらに伸ばしてこっちを見ていた。

「ちょっと待ってて、呼んでくるから」

誰を?主語は?

と内心突っ込みたかったけれど、私は黙っていた。

ハンモックから降りて、コーギー犬をなでてやる。

嬉しそうに私にとびついて来て、顔をなめた。


「お待たせ」

私はその女性の声に顔を上げる。

私の、大切な人。

いつも守ってくれる人。
愛してるなんかじゃ足りない人。

「ハル…!」

「いろは!」

なんだか少しメロドラマ的な再会になってしまったけれど、確かにそこには春雪がいたんだ。

「ハルぅ…」

私は泣きながら春雪に抱きついた。

ハル、ハル、ハル…。

何度も名前を呼んだ。

春雪は私の頭を優しく包み込んで、髪に手グシを通す。

優しい、手。
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