First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
内心、落とした生徒が自分で探すべきなんじゃないか、と思ったけれど、こうして春雪のそばにいられることが私は嬉しかった。


「あった!!」

私は思わず大きな声を上げた。

ギンガムチェックのリボンのついた鍵が確かに落ちていた。

でもなんだか見覚えのある鍵のような気がした。
けれど、どこでそれを見たのかは思い出せなかった。

「ああ、黒川さんありがとう」

本当は、いろは、って呼んでくれることを期待していた。

黒川さん、か。

なんだか他人みたいだ。
すごく胸が苦しくなる。
なんで、名前で呼んでくれないの?

今は私と紅と春雪の3人しかいないんだよ?

春雪は事務的に鍵を受け取ると、会釈をして行ってしまった。


「なんだかすごくよそよそしかったね」

紅が眉をひそめて言う。
やっぱり紅も感じるんだ。

私は泣きたい気持ちになった。

「紅ぃ…」

我慢できずに紅に抱きつく。

紅はよしよし、と頭を撫でてくれた。

「よし、私が今度呼び出して事情を聞いておいてあげるから」

「本当?」

「うん」

「紅大好き…!!」

「そんなの知ってるよー」

紅はいたずらに笑うと、小さな私の体を抱きしめた。
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