First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜
どうして、春雪?

あきは姉ちゃんなんて愛してない、って言ってたじゃない。

愛してるのはいろはだけだ、って。

これからは俺が守る、って。

私は溢れてくる涙をTシャツから伸びた腕でぐっとこすり、歯を食いしばった。

私は信じる、春雪のこと。

だって私は春雪を愛してるから。


私が見ているとは知らずに、あきは姉ちゃんと春雪のキスは続いた。

街灯のもと、何かがきらっと光った。

それにあきは姉ちゃんが気づいて、拾い上げた。
「あら、ハルユキ。車の鍵、落としてるわよ?」
それは私が紅と一緒になって探した、あの鍵だった。

春雪、なんで生徒の落とし物なんて言ったの?

春雪の、車の、鍵なんでしょ?

どうして隠すの?

私には秘密なんか作らないでよ。


あきは姉ちゃんの声がさらに続く。

「このリボン、私がつけたのよね。まだ学生だったときに」

懐かしそうに灯りに鍵をさらし、ふっと視線が動いた。

窓から覗いている私とあきは姉ちゃんの目が合う。

あきは姉ちゃんは自慢げににこっと笑うと、

「ハルユキ、もう一度、キスして?」

春雪は私に気づいていない。

しないで、キスなんか。
春雪、やだよ!!
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