血だまりの少女
今朝、母親は勤務している小学校からケータイで電話を掛けてきた。
電話の内容は、最近息子の様子がおかしい、というものだった。
『引きこもってると思ったら散歩に出掛けたり、私が仕事から早く帰ると後から帰宅した息子と玄関で鉢合わせした事が何度もあったの。数日前、息子が居ない間に部屋に入ったら新品のスニーカーが置いてあって、玄関に置かないから変だなと思って手に取ってみたら、スニーカーの裏が少し汚れていたのよ。私に見つからない様にどこかへ行っているんだと直感したわ!』
親は見ていない様で子供の様子をよく見ている。
ちょっとした変化にも気が付くものだ。
『きっと今日もどこかへ行って、もしかしたら帰ってこないかも……それに何か隠れて悪い事をしてる可能性だって……』
息子を心配するというよりは、疑っている様な口振りである。
『これ以上、恥をかきたくないのよ。私が居ない間、息子がどこに行ってるのか調べてちょうだい』
母親は自分の事しか考えていない様だ。
『息子さんが行きそうな場所など、心当たりはありませんか?』
『息子は頭が良いの。とってもね。ただそのせいで周りと馴染めてなかったみたいで、その……お邪魔できる友達の家はないのよ』
息子の自慢話は声に張りがあったのに、その後からは自分の事の様に恥ずかしそうな声色になってしまった。
『では心当たりはないんですね?』
『いえ、ひとつだけ……』
それが、この森の中だと言うのだ。