血だまりの少女
「地味なら多少汚れても平気でしょ」
「いや、高かったんスよぉ〜!枝とかで破けたら……あっ!ちょっ、先輩ッ!」
私は大きなため息をついて二宮の腕を掴み、無理矢理森の中に連れて行く。
二宮はクマが出るかもと心配していたが、クマどころか鳥の鳴き声は遠くで響いているだけだった。
時折、捜索中の少年の名を呼ぶが、返事はない。
「やっぱりここには居ないんですよ……帰りませんか?」
危険が無いと分かった二宮は、草や木の枝を掻き分けて奥へと進む私の背中に声を掛ける。
「そうね……」
私は振り返らずに答える。
「そもそも何で、ここに居るなんて母親は言うんでしょう……」
「それは」
噂を知らないのか、私は二宮の質問に答えようと口を開くと、少し開けた空間に出た。