血だまりの少女
『大丈夫?』『泣かないで』『折笠さんのせいじゃないよ』なんて優しく無責任な言葉を掛けられて背中を撫でられたら、私はその手を振り払って、乱れた感情に任せて赤野を怒鳴っていたかもしれない。
涙を拭い、クリアになった視界は血だらけの床が広がっていた。
「ッ!!」
二宮の肉の塊を包み込んだイバラの網の下には、真っ赤なワインボトルが置かれており、二宮の血が溜まっていた。
ぽたっ……ぽたっ……ぽたっ……。
今も一滴ずつ赤い雫が落ち、ボトルの口からは二宮の血が溢れて床に血だまりを作っていた。
ボトルに溜まった二宮の血の役割を悟り、怒りが込み上げてきた。
ブチッ……
私の中の何かが、音を立てて千切れた。
「クソッ!」
ふざけないで!と叫ぶ代わりに私は二宮の血が溢れるボトルを蹴り飛ばそうと足を上げた。
だが、それは叶わなかった。
黙って横から私を見ていたはずの赤野が、私の両腕ごと後ろから抱え込み、二宮の肉の塊から私を遠ざけたからだ。