君とのキスの意味
水野君の身体を支えながら、トイレへ移動する。身体はフニャフニャだが、水野君が発する言葉や態度は、素直で可愛い・・・

『男女兼用』のトイレに、迷わずに入る。中は仕切りのない広い空間だった。

男子トイレは、鏡の付いた洗面台と便器の間にパーテーションがあって仕切られていたが、ここにはそれもない。

水野君を抱えて便器の前まで行き、便座を上げる。

「水野君」声をかけると、水野君が便器に身体を寄せる。

「うっ!・・・」

顔を歪ませた後、吐き始めた。俺は水野君の背中を擦る。

しばらく吐いて落ち着いたようだ。

「もういい?」

「ふぁい。つかもん、ごめんなさい!ほんとうに、ごめんなさい!」

眉尻を下げながら、水野君が何度も謝る。

「うん、わかったから」

洗面台に移動する。口の周りを洗い、口を濯ぐ水野君。ペーパータオルで口元を拭いてやると、俺の手に、水野君の手が重なるようになって拭く。

拭き終わると「ありがと」と、フニャリと笑った。

「うん」と俺もつられて笑ってしまう。

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