君とのキスの意味
彼女はギュッと目を閉じ、薄く開かれた唇から、甘い吐息が微かに漏れているのに気付く。

このままいつまでも、こうしていられそうだ・・・なんて思った時、脇腹辺りのシャツを、彼女がギュッと強く握った。

ハッ!として、顔を離す。やり過ぎた・・・!夢中になりすぎた。

彼女の顔を見る。ハァ~と息を吐き、わずかに胸を上下させて呼吸をしている。

もしかして、呼吸をしていなかったのか・・・?

軽く眉間にシワを寄せ、唇を薄く開き、浅く呼吸を繰り返す。

普段、見る事のない水野君の表情(かお)─

やっぱり、その顔は、ダメだ・・・!

彼女を支える腕に力が入る。

掌で、彼女の頬を優しく包む。気持ちいい・・・ずっと、触れていたいくらいだ。

そんな気持ちにケリをつけるように、舌先で彼女の唇を「ペロッ」と舐めた。

彼女の身体に、一瞬力が入った後、徐々に力が抜けていく。少しして、スーッと静かな呼吸が聞こえてくる。

「水野君。・・・水野君!」

声をかけたけど、目覚める気配はない。

「やっぱり、やり過ぎた・・・」

彼女は、意識を失うように、眠りに落ちていった。

< 105 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop