君とのキスの意味
でも・・・

それは俺にとって、きれいな風景画を見るのと同じようなもので。

もっと近付きたい。触れてみたい。心も、身体も、その見えない所全部を、見てみたい・・・

そんな風に想う相手は、一人だけなんだ─

俺が頭の中で、どんな事を考えていようと、その時はくる。

「塚本さん。私の“ 彼氏のフリ ”ではなく、本当の彼氏になってくれませんか?」

白石さんの形のいい口唇がゆっくり動いて、俺にそう告げた。

「ありがとう。でも、ごめん!」

俺は、頭を下げた。白石さんが慌てて言った。

「塚本さん!頭を上げてください」

俺は顔を上げて、白石さんの視線を受け止める。

「白石さんは、すてきな人だと思う。きれいだし、優しくて、周りに気遣いもできる」

フッ!と短く息を吐く。

「でも、俺にも気になっている人がいて・・・彼女に想いを伝えようと思ってる。どうなるかわからないけど」

「私では、ダメですか?」

白石さんは表情を変えず、ずっと真っ直ぐ俺を見たまま言う。

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