君とのキスの意味
「『彼氏のフリ』じゃなくて、本当の彼氏になってほしいって・・・」

「っ!・・・」

水野君の空気が変わる。慌てて俺は続ける。

「でも、すぐに断ったから」

「どうして?白石さんみたいに、きれいで、性格もいい人、断るなんて信じられない!」

「それは・・・」

会社の職員駐車場に到着したので、とりあえず、自分の専用スペースに車を止める。

駐車場には、2~3台の車しか止まっていない。

「どうして?」水野君、どうして君がそれを聞くの?俺の事、「恋しちゃいました」て言ってくれたのに。白石さんとは、付き合ってないと言ったのに・・・

車のエンジンを切り、水野君の方をゆっくりと見る。

彼女は俯いている。

俺が君に伝えたかったのは、白石さんとの事がどうって事じゃない。

君が俺に言いたかった事も、こんな事じゃないはずだ。

─あの日、たぶん君が、ものすごく勇気を出して聞いてくれたのに、自分の準備ができていなくて、ちゃんと答えられなかった。

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