君とのキスの意味
嘘もつけず、本当の事も言えず、かえって君を混乱させただけだった。

・・・でも、今は・・・ちゃんと自分の気持ちを伝えるから、もう一度だけ、訊いてほしい。

「水野君が、一番俺に訊きたい事は、そんな事?ちゃんと答えるから。今度は、ごまかさずに答えるから。もう一度訊いてほしい」

水野君が顔を上げ、潤んだ瞳で俺を見つめる。

「塚本さん!」

「はい」

「この前の飲み会の時、私に・・・キス、しましたか?」

「はい、しました」

水野君を見つめたまま頷いた。

「それは・・・それは、どうしてですか?」

一瞬目を閉じ、すぐに開く。伝えたかった想いを込めて、彼女を見つめる。

「『愛しい』と思ったから。君に触れる事を、どうしても我慢できなかった」

水野君の瞳から、涙が溢れた。俺は、愛しい彼女を抱き寄せる。

やっぱり、泣くんだ・・・

水野君も、俺の背中に腕を回す。

とても穏やかな気持ちのはずなのに、彼女の温もりを感じていると、少しずつ鼓動が早くなってくる。

< 186 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop