君とのキスの意味
おそらく、暗証番号が書いてあるであろうメモを手にして、おばあさんが、目をパチクリさせた。

「暗証番号は、他人に教えてはいけません。暗証番号が書いてある紙なんかも、絶対に!通帳と一緒に保管してはいけません」

おばあさんの目を見ながら、一言一言、しっかりと伝えた。

おばあさんは、人のいい感じの笑みを浮かべて「わかったわ」と頷いた。

『操作を最初からやり直せ』と、吐き出された通帳とキャッシュカードをおばあさんに渡す。

今度は、沙映が見守りながら、全部おばあさんに操作してもらう。

暗証番号を入力する画面が出た。

「私が出てから、暗証番号を入れてくださいね」

そう言って、キャッシュコーナーを出た。

しばらくして、再びおばあさんが扉を開けた。

「ありがとう!一人でお金がおろせたわ」

ニッコリ笑った。沙映も同じように、笑みを返した。

「制服で行ったから、銀行の職員さんみたいに見えたのかな…」

彼女は、眉尻を下げて笑った。

そんな話をしながら、沙映の右手はずっと動いている。

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