君とのキスの意味
今日は、何セットするつもり?

俺にしてみれば、沙映の肌に触れている方が気持ちいい。

どこに触れても、柔らかで、なめらかで、ずっと触れていたい…そう思ってしまう。

…ヤバい…沙映に腕を撫でられながら、そんな事を思い出していたら、ヘンな気になってきた。

「そろそろ、やめてもらえませんか?」

一応、遠慮がちに言ってみる。

「えっ⁉なんで?塚本さん、全然くすぐったくないでしょ?」

沙映が少し唇を尖らせながら、上目遣いで、俺を見る。手の動きも止まらない。

だから、そういう顔もよくないんだって…

確かに俺は『くすぐったさ』をあまり感じない。前にそれで、沙映にひどい言われ方をした。

「“くすぐったいかどうか”だけの話じゃないから。とりあえず、今日はもう十分だろ」

「十分かどうかは、私が決める!くすぐったくないなら、いいじゃない!」

「だから、くすぐったいだけの話じゃなくて!」

譲らない沙映に、ちょっとイラッとする。

「くすぐったいだけの話じゃないって…私に、触られるのがイヤなの…?」

急に声のトーンが落ちた沙映。不安そうに、瞳が揺れている。

だから…そういう顔もダメだから……

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