君とのキスの意味
お店から出る前、水野君と顔を合わせた。こんな風に顔を合わせたのは、今日は、初めてだったと思う。

水野君に元気がないのはわかっていたが、いつも通り声をかけた。

やっぱり、不機嫌な返しをされた。俺には言ってもいいのに。「居心地が悪い」て。

なのに最後には「上機嫌です!」と言い切った。

水野君らしくて、一人で笑った。

これから、村瀬君と向き合う。

短い会話だったのに、水野君から“ 元気 ”をもらった気がした。

俺の車の助手席に村瀬君を乗せ、一課のみんなに見送られながら出発した。

村瀬君は、泣きながら手を振った。

水野君の姿を探したけど、見つけられなかった。小柄な彼女だから、誰かの影になってしまったのだろう。

しばらく静かに涙を流していた村瀬君だったが、鼻を啜りながら、ハンカチで目元を拭く。

「塚本さん、送ってくださってありがとうございます」

と、小さく頭を下げた。

「いや、気にしないで」

「塚本さんが送ってくださるって事は、私、期待してもいいんでしょうか?」

チラッと村瀬君を見ると、バッチリ目が合ってしまった。

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