君とのキスの意味
一度だけ大きく深呼吸して、村瀬君に身体を向ける。

村瀬君も俺の事を、見つめていた。

今まで村瀬君は、俺にストレートに想いを伝えてくれていた。

だから俺も、言葉を選びながらも、断りやすかったんだと思う。

今の村瀬君の眼差しは、これまでで一番穏やかだと思った。

“ きれい事 ”ではダメだ。俺の本当の気持ちでないと、伝わらない──そう感じた。

「たぶんこれから、村瀬君にとって酷い事を言うと思うけど・・・」

村瀬君は、しっかりと頷いた。

「俺は“ 男 ”だから、村瀬君が『一度だけでいいから』て言うのなら、たぶん、できると思う」

「『たぶん』ですか・・・」

「でも、そういう事をしたら、気まずくなる。例え、それが村瀬君が望んだ事だったとしても、今までのようにはできない」

村瀬君の瞳を見つめる。最後まで、逃げるな!

「今回の異動で、一緒に仕事をする事は当分ないだろうけど。また機会はあると思う。でも、きっと俺は村瀬君を避けてしまうようになる。例え君の望みでも、俺は“ 信頼し、尊敬もできる仕事のパートナー ”をなくしたくない!」

ハッ!と村瀬君が息を呑むのがわかった。

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