君とのキスの意味
そう言った後、村瀬君は薄く笑った。

「でも塚本さんが『村瀬はきれいだから、確かにお酌をしてもらうと嬉しい。でも、それ以上にきっちりと仕事をこなす優秀なアシスタントです!』そう言って笑ってくれたんです」

そんな事、言ったかな?自分では、よく覚えていない。

「あの時から私、塚本さんに本気になりました。みんなが『クールの藤田か、ソフトの塚本か?』て騒ぐから、とりあえずノリで『じゃあ、塚本さん』て感じだったんですけど・・・」

俺は、思わず苦笑した。なんだ、ノリだったのか。最初の頃、結構気を遣ってたんだけど。

「こう見えて私、仕事好きなんです。その分、努力もしていたつもりです。それが認めてもらえて、嬉しいです」

村瀬君が、ニッコリ笑った。今までの中で、一番きれいな笑顔だと思った。

「一課は、みんなが認めてる。部長だって課長だって、村瀬君の為になると思うから
、川下部長の人事を承諾したんだ」

「わかってたんですけどね」と言って、村瀬君は肩を竦めた。

「塚本さん、私の本当の最後のお願い、聞いてくれますか?」

俺が頷くと、村瀬君は、小さく息を吐いた。

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