君とのキスの意味
「それに私、約束があるから!」

白石さんが、チラッと俺を見る。なんか、イヤな予感が・・・

「こっ、こちらの方と会う約束をしていたから、この本屋さんに来たの!」

「!!」

予感があったとはいえ、白石さんに急に手で示されて、目を見開いて固まる。

訝しげに俺を見た男は、俺の様子を見てフッと笑う。

「雪乃、苦しまぎれの嘘をつくんじゃない。こちらの方が、困っていらっしゃるじゃないか」

白石さんは、すがるように俺を見ているが、とっさの言葉も出てこない。

「行こう!」

男が白石さんの手首を掴んだ。

「痛っ!」

白石さんが顔を歪めた。その怯えた様子に、今度は俺の身体が動いた。

「白石さんの手を離してください」

男の腕を掴み、目を見据えて低い声で言った。

ただの通りすがりの男だと思っていたら、急に白石さんの名字を言ったので、俺を見て動きを止める。

「白石さんには、いつも仕事の方でお世話になっています。今日は、プライベートですが」

「本当に・・・?」

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