君とのキスの意味
白石さんが口を開く前に、笑ってそう言った。

「はい・・・」

やっと俺に届くような小さな声で、白石さんは返事をした。

本屋に戻り、真っ直ぐカフェを目指す。

ちょうどみんながお茶をする時間だったのか、カフェは賑わっていた。

空いている席を探せば、壁際のカウンター席しかないようだ。

カウンターか・・・2人で並んで座った時の距離の近さに躊躇する。

でも、一番端の席になるし、自分達2人が座れば、空いている席が一席になる。わざわざ、そこに座ってくる客もいないだろうと思った。

「カウンター席でもいい?」

白石さんに訊くと、小さく頷いた。

2人でホットコーヒーを受け取って、カウンター席に座る。一番端に、白石さんが座る。

2人共無言で、一口、コーヒーに口をつける。

先週は、コーヒーの香りにホッとしたけど、今はなんだか落ち着かない。

白石さんは、コーヒーのカップを見つめながら、大きく息を吐いた。そして、何かを決めたように顔を上げる。

身体を少し斜めにして、俺の方を向いた。

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