君とのキスの意味
「塚本さん、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

そう言って、頭を下げた。

「自分が誰だか、気付いてましたか」

白石さんは頷いた。

「はい。塚本さんも、私の事覚えていてくださったんですね」

「“ 受付の白雪姫 ”を忘れる男はいないでしょう」

白石さんは、そのきれいな見た目と、『白石 雪乃』という名前から、取引先の間で“ 白雪姫 ”なんて呼ばれているらしい。

宮前に言われて、初めて知ったんだけど。

「やめてください。面と向かって言われると、本当に恥ずかしいです」

白石さんは、眉尻を下げて言った。

「塚本さんこそ、うちの会社の女の子達で、塚本さんの事を知らない人はいませんよ。“ クールの藤田、ソフトの塚本 ”ですよね?」

「本当だ。とてつもなく恥ずかしいですね」

白石さんと俺は、顔を見合わせて笑った。

よかった。顔色がよくなってきた。瞳にも、生気がある。

「塚本さん、私の話、聞いていただけますか?」

白石さんが、俺を見ながら言う。俺は、大きく頷いた後言った。

「でも、無理はしなくていいから」

< 44 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop