君とのキスの意味
白石さんは、フルフルと首を振った。

「いえ、聞いてほしいんです。ご迷惑だとは思いますが・・・」

白石さんの瞳が、不安げに揺れた。俺は薄く笑って頷いた。

「白石さんがそう言うのなら」

「ありがとう」

白石さんも薄く笑ってそう言った。もう一度、カップに口をつける。

「先程の男性は、加賀 浩司(かが ひろし)といって、私の中学・高校の同級生です。で・・・私の“ 元カレ ”です」

言葉を選ぶように、白石さんはゆっくりと話し始めた。

白石さんは、県外の大学に進学し、卒業後そのままそちらの商社に就職したそうだ。

そこでも、やっぱり『受付』だったそうだ。

就職して半年程経って、彼氏ができた。同じ会社の４才年上の人だ。仕事もできて、カッコよかった彼は、社内でも何かと注目される人だった。

だから「付き合っている事は、しばらく秘密にしよう」と言われても、自分の事を思ってくれての事だと思ったそうだ。

だが、付き合って半年が過ぎた頃、彼のある噂を耳にする。

彼が、取引先の重役に気に入られ、その娘とお見合いをする・・・というものだった。

< 45 / 198 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop