君とのキスの意味
「白石 雪乃です。今日は一日、よろしくお願いします!」

みんなが歓声とともに拍手をした。

この大会は、主催する企業が、取引先を招待して行う大会だから、至れり尽くせりの対応をしてくれる。

“ お世話係 ”として、各チームに一人ずつ女子社員がついてくれる。高野主任達が、この大会を楽しみにしている大きな理由の一つだ。

開会式の時に見かけたから、白石さんが来ているのは知っていた。でも、“ お世話係 ”なんて・・・野球大会の間は、ずっと一緒じゃないか。

俺は、複雑な思いで白石さんを見た。

先週よりも、顔色はいい。表情も明るいようだ。加賀さんとの事、いい方向に動いているのかもしれない。

8チームが参加しているこの大会。4チームずつ、AゾーンとBゾーンに別れた。

うちのチームは、Bゾーンの2試合目。しばらく空き時間ができた。

Aゾーンの1試合目で、去年の優勝チームが試合をするという事で、見に行こうと、藤田さんから声がかかった。

その直後、白石さんが近付いて来た。

「塚本さん、お話があります。少しいいですか?」

そっと囁くように言われた言葉に、俺は考える前に頷いていた。

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