君とのキスの意味
俺は、小さく息を吐いた

「わかりました。引き受けます」

白石さんは目を見開き、息を呑んだ。

「あ・・・よかったです。断られたら、どうしようかと思ってました。ありがとうございます!・・・また、塚本さんを巻き込む事になって、本当にごめんなさい」

眉尻を下げながら笑っていた白石さんだが、大きな瞳からツーッと涙が零れた。

「白石さん・・・」

「塚本さん、ごめんなさい。あの・・・今だけ・・・」

白石さんはそう言うと、俺に一歩近付き、肩にゆっくり頭を乗せた。

白石さんの身体が、小刻みに震えている。ずっと不安と戦ってきたんだよな・・・

白石さんの両手が、キュッと俺の腕を掴んだ。

こんな時、上手な慰め方なんか思い浮かばない。

とりあえず・・・というか、白石さんの背中を右手で擦ってみる。

泣いている子どもを、あやしてるんじゃないんだから!とは思うが、こんな事ぐらいしかできない。

「塚本君は、女心をわかってない!」

高校生の時、よくそんな事を言われたな・・・と思い出す。

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