君とのキスの意味
「わかりました!そうします」

男2人はそう言って軽く頭を下げ、そそくさと立ち去った。

全く・・・自分がどこの会社の人間かわかるようなこんな所で、よくナンパなんかできるよな!

水野君が、大きく息を吐いた。

小柄な水野君に対して、男2人・・・いきなり、手首まで掴まれて。こんな場所でも、やっぱり怖かったよな・・・

「行こう」

水野君に声をかけ、掴まれていた方の手首を、優しく握った。

水野君がどう思うのかわからないけど。あの男に、手首を掴まれた感覚を早く消したいと思った。

俺がこうする事で、感覚の『上書き』ができないかと・・・

どうしてそんな事を思ったのか?俺は、もっと早く、自分の気持ちに向き合えばよかったんだ・・・

突然の事に、最初はびっくりしたようだった水野君だが、それでも、何も言わずについてくる。

少しすると、力が入っていた腕が、だんだん力が抜けていくのがわかった。

前を向いたまま、水野君に訊く。

「どこに行ってた?」

「コンビニです」

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