君とのキスの意味
「車の中で寝てた時、ちゃんとロックしてた?」

水野君は、少し考えるように瞳を動かした後、小首を傾げ「てへっ」と笑った。

・・・可愛い・・・て、そうじゃないっ!

水野君から視線を逸らし、盛大に溜め息を吐いた。そして、もう一度水野君を見つめる。

「いくら昼間だとはいえ、どんなヤツが来るかわからないコンビニの駐車場で、ロックもせずに、寝てた⁉」

畳み掛けるように、俺は続ける。

「ケータイの着信にも気付けないほど、熟睡していた⁉ロックもせずに⁉」

「う"っ・・・」

『口』では水野君に敵わないが、今回ばかりは言わせてもらう。

「水野君は、いつも隙がありすぎる。そんなだから、さっきみたいなのにも、絡まれる」

せっかく落ち着いていたのに、また、水野君の瞳が大きく揺れる。

しまった!言い過ぎた・・・と思った時には、水野君の瞳から、スーッと涙が零れた。

また、そんな顔をする・・・

水野君を見付けた時は、少し青ざめていた顔色が、歩いたせいか、ほんのり赤くなっている。瞳には、ウルウルとたくさん涙を溜めているし、薄く開いたふっくらとした唇で浅く呼吸をしている。

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