君とのキスの意味
「待ち合わせなんです」

と、店員に声をかける。雪乃さんが店内を見渡し、加賀さんの姿を見付けた。


─「お待たせしました」

テーブルに3人分のコーヒーが置かれる。それぞれがコーヒーのカップを手に取る。俺と雪乃さんはミルクだけを入れ、加賀さんはブラックで口をつけた。

俺から切り出した方がいいんだろうか?それとも、向こうの出方を見る?

雪乃さんと電話で打ち合わせしたのは、付き合っていれば、知っているはずの最低限の情報だけ。

実際に加賀さんと会った時どうするかは、ほとんど話していない。

加賀さんが、どういうつもりで雪乃さんの彼氏に会わせろと言ったのか、いまいちわからない。

雪乃さんは、自分への嫌がらせで言っただけで、本気で会うつもりはないのかも・・・とも言っていたが、それは希望的観測にしかすぎなかったようだ。

俺が迷っていたら、加賀さんの方が口を開いた。

「本当にあんたが来るとはね」

唇の片端を上げて、皮肉げに笑った。

初めて会った時の事、やっぱり信用していなかったんだ。そりゃ、そうか。

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