君とのキスの意味
「えっ・・・」

俺は、何となく気になっていた事を訊ねた。先ほどの加賀さんの言葉を聞いたら、益々わからない。

「加賀さんだったら、もっとうまく立ち回れたはずですよね?雪乃さんと理子さんに“二股をかける”なんて、どうしてそんな、すぐにバレそうな事をしたんですか?」

「そんな事、あんたには関係ないっ!」

加賀さんは、顔を紅潮させて言った。

「理子さんを利用する為だけに付き合ったと言うなら、雪乃さんとうまくいきそうになった時点で、理子さんとは、さっさっと別れればよかったんだ」

「それはっ・・・」「陽平さん?」

俺が言い出した事に、加賀さんは動揺し、雪乃さんは疑問をもったようだ。

それでも俺は続けた。

「ずっと想いを寄せていた雪乃さんと、付き合えるはずなのに、どうしてきちんと告白しなかったんですか?その事で、雪乃さんが不安に思っていた事も、加賀さんは気付いていたはずですよね?」

「・・・」

とうとう加賀さんは黙りこみ、雪乃さんは、静かに彼を見つめた。

加賀さんは目を閉じ、何かを考えているようだった。もしかしたら、ようやく自分の本当の気持ちと、向き合っているのかもしれない。

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