ベイビー クライ
それが答えですか
感情は、数式のように明確な答えが用意されてるわけじゃないから。
先生の気持ちを掴むこと、できそうにないよ。
「どうして、言ってくれなかったんですか!?黙って辞めるつもりだったんですか?」
強めの口調で言ったあたしに、先生は目もくれない。横目でちらりとも見ない。
「あたしとのことが辞める前に学校にバレたらまずいから…っ」
「いちいちなぁ。んな講釈はいらねぇんだよ」
欝陶しそうに舌打ちをして、「なぁ、駿河」言いながら、スピードを緩めて路肩に停車させた。
このまま直進したら、もうすぐ桜祭りが行われる大きな公園がある通り。
「俺とこうやって、一緒にいるのは嫌?」
「…っ」
「やめたい?」
遊歩道沿いの街灯が、あたしを見つめる先生の瞳を優しく照らす。お陰で口調まで、柔らかくなったようで。
窓のすぐそばで、芽吹いたばかりの桜の木が、春風にふわりと揺れる。
「ま、リスキーだし」
「見つかるの、が?」
「いや、ちげーだろ」
くっと、こもるような笑い声をあげた先生は、あたしの手をそっと握った。