ベイビー クライ
なくしたくないもの。
自分に嘘を付いたり、気持ちを隠したり、誤魔化したり。傷付くことを恐れるなんて、もうしない。
真っすぐに、先生のこと好きになっていく気持ち、大切にしたい。
「奇遇だな。俺も」
ゆるりと頬を綻ばせた先生の顔が、あまりにも現実離れしてて夢のようだったから、目の前が桜満開、みたいに、ピンク色に霞んだ幻想を抱いた。
「っ、先生」
「ふたつめのレクチャー。目ぇ閉じろ」
「…っ」
たとえ離れたとしても、この想いが消えて、なくなることなんてない。
先生って呼べなくなったとしても、あたしの気持ちに偽りなんてない。
それから先生の顔が徐々に近づいて、唇を重ねたら、ほんのりとほろ苦い煙草の香りがした。
嫌な匂いじゃなかった。むせ返るような嫌悪ではなくて、心地よく浸れる味だった。
それはしっかりと、今も、この先も永遠に。あたしの記憶に、刻み込まれる。
桜のつぼみが開いて、ピンク色の花が咲いて、春の暖かい風が薫るようになっても、ずっと。忘れないから、ね?
先生――