ベイビー クライ
それから、数日が経って
「つばさーっ!みんなが担任と写真撮ろうって!」
離任式の後。
あたしたち二年四組の担任も他校に移動が決まって、隠れて泣いてる子もいた。
五分咲きの、校庭の桜の木の下。
「ごめん、あたし、」
「――つばさ」
芽衣ちゃん、あたし、それから寄せ書きの色紙を小脇に抱えた、柏村先生。
妙なトライアングルが点を線になぞって、真っ先に芽衣ちゃんが、怪訝そうに顔を歪めた。
「なにー、また呼び出し?つばさったら最後まで柏村に目つけられてるね」
「…っう、うん…」
あたしの顔には、貼り付けられた笑顔。
だって――
「つばさ、準備室に来い」
「…はいっ」
先生に名前で呼ばれたの、初めてなんだもん。
今日はいつになく完璧メイクだからこれからきっと、他校の男子と遊びに行く芽衣ちゃんに手を振って、あたしは先を歩く先生の背中を追った。
“つばさ”
春の気紛れな風に、頬をひと撫でされたようなくすぐったさ。
それを噛み締めて、準備室の扉を開けた、開口一番。
「これで、拷問も終わりだな」