ベイビー クライ

「勉強でわかんねーとこあったら、俺が教えてやるからな、つばさ!」
「ありがと、基樹くん。心強いな」


やんちゃな笑顔に、ついこちらまで頬が緩む。
けれど隣には、不機嫌そうな顔付きで腕を組む、先生。


「つばさ、もしかして俺より基樹との方が年が近いんじゃねぇだろうな」
「そんな…。いかにも年増っぽいこと言わないでください」


否定の意味で言ったのに、年増が気に入らなかったのか先生は、眉間の皺をより深くした。
ちょうどそのとき、長い人影が玄関の方からあたしたち三人に向かって近付いて来た。


「あれ、基樹くんのお父さんじゃない?」
「あっ、うん、今行く」


立ち止まったお父さんが、先生に会釈する。
一瞬そちらに行こうとした基樹くんは躊躇って、あたしの正面に立ちはだかった。


「つばさ、明日も来る?」
「う…、来れたら来るつもりだよ」


あたしの曖昧な答えに、基樹くんは釈然としない顔をする。


「つばさはもう少しでテストだろ?こんなとこうろついてないで勉強しろ」
「ああっ、余計なこと言うなよ柏村先生!」
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