ベイビー クライ
という言葉はあまりにも恥ずかしすぎるから、胸にしまうことにして。
上目遣いでちらりと相手を盗み見ると、カップを片手に、「先生……?」微動だにしない。
「俺はもうお前の先生じゃねぇんだよ」
低く囁かれた言葉には、怒りにも似たものが燻っているように聞こえた。
「お前、もっと男を理解した方がいいな」
「へ……?」
怒らせたかな、と不安になって緊張するあたしに、先生は穏やかな笑みを溢した。「でもさっきの答えは、正解。」「、答え?」「嫉妬だよ」左手の、人差し指の先であたしの顎の輪郭をなぞる。
「笹原にじゃねーけどな」
こもった声でくっ、と笑い、意味が掴めずにきょとんとするあたしを面白がるように眉を動かす。
「他の女にどんだけ人気あろうが、俺には関係ねぇから」
「は、はぁ…」
だけど、と前置きして、先生は首を深く曲げてあたしの耳元に唇を寄せる。
「小5も男とみなすよ、俺は」
――小5?
待って、それって…もしかして、基樹くんのこと?
「おっ、大人げないです、先生」
「まあな。でも必死にもなるわ」
「っ、」
「好きな女のことなんだから」