密室の恋人
すごい勢いで下りていくエレベーターの表示を蒼汰は見ていた。
上がってきた森田に、
「森田さんっ、下っ」
と叫ぶ。
「ええっ。
今、上がってきたのにっ」
と言う森田とともに、駆け下りる。
エレベーターの前には人だかりができていた。
エレベーターが明らかにおかしな動きをしていたからだろう。
今は一階に停止しているようだった。
蒼汰が前に来ると、まるで、待っていたかのように、扉が開く。
中には凛子が立っていた。
誰も居ない隅を見つめ、泣いている。
「……凛子」
そう呼びかけ、動かないでいる彼女の手を引いた。
外に凛子を出したあとで、
「陸人……?」
と蒼汰は中に向かい、呼びかけた。
今は密室ではないそこは、ガランとしていて、誰の姿も見えず、やがて、扉は静かにしまった。